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多額の損害賠償も「波及事故」を防ぐための主な原因と対策
波及事故とは
波及事故とは

波及事故は、工場やビルなどが保有する高圧受電設備やキュービクル内部の機器などに事故が起きた際、その事故が原因で電力会社の配電線が停止し、その配電線に接続されている近隣の他施設まで停電を引き起こす事故です。
通常、構内で事故が発生した場合、構内の高圧遮断器やヒューズなどの保護装置が動作し、事故点を遮断するため、電力会社側には影響しません。しかし、整備不良の保護装置があったり、引込ケーブルなどで事故が発生したりすると、構内での遮断ができず、結果として電力会社配電線の保護装置が動作し、周辺地域に停電を引き起こします。
波及事故による影響
波及事故により自社が被る直接的な損害としては、突然の停電による操業停止や生産活動の損失、事故対応に伴う時間外人件費、そして損傷した電気工作物などの改修費用が挙げられます。
またさらに深刻なのは、波及事故に巻き込まれた被害者側への影響です。近隣の工場が操業停止に追い込まれたり、信号機や病院の機能停止、データの損失など、周囲に大きな影響を及ぼすことがあります。これらの被害で、キュービクルの所有者に多額の損害賠償請求が下される可能性があり、実際に損害額が1,000万円を超えた事例も存在します。
波及事故の主な原因
波及事故の発生原因は主に3つに分けられます。
①保守不備(老朽化・絶縁不良)
統計データによると、波及事故の原因の約7割が、高圧引込ケーブルおよびPASの事故によるものです(関東地域、2020〜2021年度)※1。
さらに、波及事故の原因全体の63%が保守不備に起因しています※2。
※1 出典:波及事故防止のため – 設備の新設・更新をご検討ください(関東東北産業保安監査部)
※2 出典:経済産業省「電気保安の現状について(令和3年度電気保安統計の概要)」
高圧受電設備(キュービクル)の内部は、遮断器、変圧器、保護継電器など多くの電気機器が組み合わさってできており、これらの部品にはすべて耐用年数や寿命が存在します。
保守不備による具体的な事故例は以下の通りです。
高圧引込ケーブルの劣化:
特にCVケーブルは製造後20年を超えると事故が著しく増加します。自然劣化により絶縁破壊を起こすことが多発しています。
PAS/UGSの劣化:
劣化により密閉されていた絶縁ガスが抜けたり、内部に雨水が浸入したりすることで、絶縁破壊や地絡・短絡につながります。
点検不備・劣化の放置:
ケーブル端末処理材のずれなど、年次点検では発見できず、月次点検でも異常が見過ごされた結果、雨水浸入による地絡事故に至る事例も報告されています。
②自然災害と小動物の侵入による事故
保守不備の次に多い原因は、雷や台風などの自然災害です。
落雷:
電力会社の配電線に落ちた雷が誘導雷としてPASなどの設備に侵入し、絶縁破壊を引き起こすことがあります。PASは特に落雷の影響を最も受けやすい設備ですので注意が必要です。
物理的損傷:
地震による高圧ケーブルの損傷や、台風による飛来物が機器を損傷することもあります。
鳥獣の接触:
高圧受電設備内や区分開閉器へネズミやカラスなどの小動物が侵入し、充電部に触れることで地絡・短絡を引き起こす事故もあります。ネズミが侵入経路となった低圧ケーブル入口開口部からキュービクル内に入り、計器用変流器の充電部に接触して波及事故につながった事例もあります。
③人為的要因と過失
波及事故は、建設や土木の作業者、点検業者などによる故意・過失なども原因になります。
操作ミス・保安規定の不遵守:
構内電気設備の異常を検知して自動開放された区分開閉器を、電気主任技術者等に連絡せずに自己判断で操作し、波及事故につながった事例もあります。
点検時の人為的ミス:
停電を伴う点検終了後、受電設備に取り付けた作業用安全装置の取り外しを忘れたまま区分開閉器を投入し、事故に至ることもあります。
これらの故意や過失による事故は、周辺設備への被害だけでなく、作業員自身が人身事故に巻き込まれるリスクもあります。作業や点検は必ず電気主任技術者に任せ、事前計画を遵守し徹底した管理を行うことが重要です。
波及事故を防ぐための対策
定期的な保守点検

波及事故の大半は、保安点検によって予防できます。電気事業法に基づき、キュービクルには毎月もしくは隔月の月次点検、毎年もしくは3年に1回の年次点検が義務付けられています。
また予防保全は対策として非常に効果的です。法定点検の遵守に加え、機器の更新推奨時期を把握し、適切な点検を通じて異常を発見したら、老朽化した機器は早めに取り替えましょう。
月次点検では機器の異常な温度上昇や異音・異臭などを確認し、年次点検では高圧電力部分の絶縁などを確認します。設置から時間が経過した高圧受電設備においては、月次点検では見抜くことのできなかったケーブルや開閉器の劣化が進んでいる可能性があります。主任技術者の指導に基づき、計画的な設備更新を行うことが、保守不備による事故を防ぐ確実な方法です。
最新技術の導入とその効果
機器の計画的な更新:
特に事故率の高い老朽化した区分開閉器やケーブルの取り替えを重点的に進めることを推奨します。高圧機器の多くは15年を目安に更新が必要となります。
遠隔監視システムの活用:
遠隔監視システムを導入することで、24時間体制で設備の異常を監視できます。また、絶縁監視装置が設置されたキュービクルは安全性が認められ、点検周期の緩和が認められることがあります。
雷害対策:
波及事故原因の上位を占める雷害事故を防ぐため、雷が発生しやすい地域では避雷器の設置を推奨します。
教育の必要性
事故の約2割は人為的な過失によるものです。そのため作業や点検を行う際は、必ず電気主任技術者の指揮下で事前計画を遵守させ、勝手な操作や判断を行わないよう、徹底した安全教育と保安規定を遵守するようにしましょう。
④波及事故に関する技術と設備
UGS/PASの役割と計画的なUGS更新の必要性
波及事故の防止の役割を果たすのが、UGSやPASです。
これらの開閉器は、自家用電気工作物の責任分界点に設置され、地絡・短絡事故発生時、SOG装置の動作により事故電流を瞬時に検知・遮断し、電力会社側への波及を防ぎます。UGSやPASが適切に作動することで、事故が発生したエリアを瞬時に切り離し、近隣施設や広範囲のエリアへの影響を最小限に抑えます。
しかし、これらの重要な機器にも耐用年数があるため、設置からの年数を確認し、故障や劣化が進行する前に計画的にUGS更新やPAS交換を行いましょう。
波及事故予防のための定期点検・予防保全は関東電気・計装工事.comにお任せください!
このように波及事故が発生すると甚大な被害につながります。そのため日々の点検や予防保全が非常に重要です。
当社は電気工事・計装工事・空調工事等の電気に関するプロフェッショナル集団として、お客様のニーズにお応えしてまいりました。事業規模の大小問わず、製造業の各種工場や医療施設などに対して、キュービクル新設工事や電源容量工事などの多岐にわたる電気工事や点検に対応しております。
電気設備に関わる工事や点検に関してお悩みがある際は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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