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三相4線式とは?仕組み・メリット、注意点などを解説します
三相4線について
三相4線とは何か
三相4線式とは、主に大容量の配電に用いられる三相交流において、電圧の中心点である中性点からさらに一本の線を引き出した結線方式を指します。
従来の配電方式、特に三相3線式では、三相電源で動く電動機や空調などの動力源を得ることが主な目的でした。しかし、ビル全体や工場などでは、動力源だけでなく、照明やコンセント用の単相電源も必要となります。この単相電源と三相電源を別々の変圧器で用意するのではなく、変圧器を一台に集約し、両方の電圧を得たいというニーズから生まれたのが三相4線式です。
この方式は、国際的には一般的によく用いられているY型結線によって構成されます。
三相4線の構成要素
三相4線式は、基本的に3つの電圧相と1つの中性線で構成されます。ここでは、各相をR相、S相、T相とし、4本目の線をN相(中性線)とします。
- R相、S相、T相(電圧相):
三相交流を形成する3つの異なる電圧の線であり、これら3本を用いることで三相動力源を得ます。
- N相(中性線):
三相交流の変圧器の中性点(理論上、電圧が0Vとなる点)から引き出される線です。この中性線は、単相負荷へ電力を供給する際の基準となる非常に重要な役割を果たします。ある1相(例:R相)とこの中性線の間で電圧を取ることで、単相電圧が得られます。
三相4線のメリットと用途
三相4線のメリット
三相4線式が特にビルや大規模施設で採用される大きな理由は、多機能性と効率性です。
まず、三相4線式の最大のメリットは、三相電圧(動力)と単相電圧(電灯)を一つの結線から同時に供給できる点です。三相3線式では三相電圧しか得られませんが、三相4線式は中性線があるため、三相電圧に加えて単相電圧が得られます。これにより、照明やコンセントなど単相の負荷と、空調やポンプなど三相の動力負荷の両方へ、効率よく電力供給が可能です。
次に、給電効率の良さです。特にデータセンターなどの大容量設備においては、UPSからAC400Vの三相4線式を用いれば、AC230V(単相)をトランスによる降圧なしで直接取り出すことができます。三相3線式のようにトランスで降圧を行う方式では電力損失が生じますが、三相4線式はトランスなしで供給が可能な場合があり、効率が優れています。
三相4線の主な用途
三相4線式は、大容量の電力を扱い、かつ単相・三相の両方のニーズが高い施設で採用されます。
- 商業施設、オフィスビル:照明、コンセント(単相)と、エレベーター、空調設備(三相)への同時供給。
- 工場:機器や電動機(三相)と作業スペースの照明(単相)への供給。
- データセンター:特にAC200V給電を主体とするクラウド基盤では、効率化を追求するために三相4線式(例:AC400V/230V)の採用が進んでいます。
三相4線の特性
電圧と電流の特性
三相4線式はY結線を採用しているため、線間電圧と相電圧の間には明確な関係があります。
Y結線における重要な電圧関係は以下の通りです。
相電圧×√3=線間電圧
ここでいう相電圧とは、三相4線式において単相電圧として利用される電圧の大きさです。
例えば、三相電圧(線間電圧)が400V級の場合、得られる単相電圧(相電圧)の大きさは、400Vを√3で割った約230Vとなります。
また、電流に関して特に注意すべき技術的特性は、中性線に流れる電流です。IT機器内にある電源変換回路系からは、基本波の整数倍の周波数を持つ高調波が発生します。特に第3高調波は、各相から発生したものが同相で加算されてしまう性質があり、この高い高調波電流が中性線へと流れ、電圧波形がひずむ可能性があります。ただし、IT機器に標準内蔵されているPFC回路(力率改善回路)などにより、高調波が抑制されることが確認されています。
接続方法と配線
三相4線式では、主にY結線(スター結線)が用いられます。Y結線は、3つの相(R,S,T)の端子を一箇所で接続し、その共通接続点から中性線(N)を引き出すのが特徴です。
この結線方式が採用される最大の理由は、前述の通り、中性点を利用することで相電圧を取り出し、三相と単相の両方を供給できるという特性があるからです。三相3線式に用いられるΔ型結線(デルタ結線)には中性点がないため、中性線を引き出すことはできません。
三相4線の注意点
設計時に考慮すべき点
三相4線式の設計においては、安定した電力供給のために、特に中性線に起因する現象を考慮する必要があります。
データセンターのようなIT機器を多用する環境では、高調波の問題が設計上の重要な課題となります。高調波による中性線電流の増加や電圧波形のひずみを防ぐため、使用するIT機器がPFC回路(力率改善回路)などの高調波抑制機能を備えているかを確認し、中性線への電流が規定値以下になることを検証することが重要です。
また、トランスレス配電を採用する場合、ノイズ対策も重要なポイントです。上位側設備から発生したノイズがIT機器へ流入する可能性があるため、UPS入力側トランスやUPS装置内のアクティブフィルタ回路(ノイズとなる不要な周波数をカットする回路)により、ノイズを抑制できることを確認しなければなりません。
施工時の注意点
三相4線式の配線施工においては、安全対策と誤接続の防止が最も重要です。
特に中性線を有する回路に漏電遮断器を設置する場合、必ず中性線も漏電遮断器に接続する必要があります。
三相4線回路で漏電遮断器を使用する際は、必ず4極のものを選定してください。
もし中性線を接続しなかった場合、単相負荷の負荷電流が漏電遮断器の内部部品であるZCT(零相変流器)を経由せずに中性線に流れてしまい、漏電していなくても漏電遮断器が誤動作してしまいます。これは現場での誤接続によるトラブルとして非常に危険であり、確実な結線が求められます。
三相4線式のメンテナンス
定期点検の重要性
三相4線式の配電システムを安定的に運用し続けるためには、定期的な点検が欠かせません。
特に中性線を通じて供給される単相負荷は、ビル内でのコンセントや照明負荷の増減によって変動しやすく、負荷バランスが崩れる可能性があります。点検においては、電圧波形のひずみが発生していないか、あるいは中性線に過度な電流が流れていないかを確認することが重要となります。高調波電流の問題は、設備の長期的な健全性に影響を及ぼすため、継続的な監視が必要です。
よくあるトラブル
三相4線式でよくある問題の一つが、中性線における過電流や波形ひずみです。
原因究明としては、まず負荷の種類と配置を確認し、高調波を発生させる機器の有無を特定します。もしIT機器のように高調波を発生させる負荷が多い場合は、中性線に流れる第3高調波が加算されている可能性を疑います。
対処法としては、PFC回路が正常に機能しているか確認すること、あるいは必要に応じて上位系統でのフィルタリング対策(アクティブフィルタ回路など)を導入することが考えられます。これらの対策は、配電システムの安定性を維持し、機器の寿命を延ばすために不可欠です。
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