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薬液配管の漏れ対策|事故事例に学ぶ原因と、材質選定・施工のポイント

技術コラム配管工事

酸やアルカリ、溶剤などを送る薬液配管は、漏れが起きると作業者の薬傷や周辺設備の腐食、排水路への流出につながるおそれがあります。漏れた箇所をふさぐだけでなく、なぜ漏れたのかを突き止めなければ、同じトラブルを繰り返すことになります。

この記事では、工場の薬液配管で漏れが起こる主な原因と、薬液ごとの材質の選び方、再発を防ぐための対策を解説します。

薬液配管で漏れが起こる主な原因

厚生労働省が公表している令和5年度の毒物・劇物の流出・漏洩事故情報を見ると、配管や継手、弁からの漏洩が数多く報告されています。原因は経年劣化による腐食だけではなく、材質の選定や施工、配管の支持方法によるものも報告されています。

1. 薬液に合わない材質を使っている

配管の耐薬品性は、薬液の種類だけでなく、濃度と温度によって大きく変わります。たとえば塩ビ管は、酸やアルカリには比較的強い一方、有機溶剤が浸み込むと膨潤・溶解し、アセトンなどにも使えません。また、添加剤として炭酸カルシウムを含む塩ビ管では、塩酸を長く流すうちに、外面からの浸み出しや割れが生じることもあります。

もちろん金属ならなんでも安心というわけでもありません。塩酸の配管を更新した際、事業所の設備選定標準で指定されていないステンレス製の配管を使ったため、腐食した箇所から漏れる場合もあります。

2. 継手やフランジの劣化・締め付け不良

漏れは配管の本体だけでなく、継手やフランジ、弁などの接続部からも多く報告されています。ガスケットの経年劣化でフランジ部にすき間ができた事例や、フランジボルトの締め付け不足で漏れた事例があります。

塩ビ管の接着接合では、接着剤の塗りムラや、塗布後に乾いた状態で管を差し込んだことによる接着不良が漏れの原因になります。接着後に所定の養生時間をとらずに通液することも避ける必要があります。

3. 熱伸縮や振動で配管や接続部に負担がかかる

樹脂配管は温度による伸び縮みが大きく、塩ビ管の線膨張係数は鋼管のおよそ6倍です。薬液の温度や外気温の変化で伸縮を繰り返すと、継手や固定部に負担がかかり、緩みや割れにつながります。外気温の変化による熱膨張で、配管内部の塩ビライニングが割れたと推定された事例も報告されています。

ポンプの脈動や振動も原因になり、配管の重さと脈動が重なって、塩ビ製の継手が折れて漏れた事例もあります。

4. 支持金具の締め過ぎで配管を傷めている

見落とされがちなのが、配管を固定するUボルトやバンドの締め過ぎです。希硫酸の配管で、取り付け時にUバンドを締め過ぎたために外から見えない損傷が生じ、長年ポンプの圧力を受けるうちに亀裂が入って、推定1,000Lが漏れた事例があります。樹脂配管については、幅の広い固定バンドを使い、Uボルトにはゴムなどの緩衝材を挟んで締め付けトルクを守るなど、配管に合わせた対応が必要です。

薬液ごとの配管材質の選び方と注意点

配管材質は、薬液の種類だけでなく、濃度・温度・圧力を確認して選びます。同じ材質でも使用条件によって適合性が変わるため、配管・バルブ・ガスケットを含めて、メーカーのデータで確認することが大切です。

塩酸

塩酸には、塩ビ管などの耐食性を持つ配管が候補になります。ただし、炭酸カルシウムを含む一部の塩ビ管では、塩酸との反応によって浸み出しや割れが生じることがあります。塩ビ管という名称だけで判断せず、塩酸用として適した製品かを確認しましょう。

また、ステンレス製でも塩酸による腐食は起こります。既存配管を金属製に変更する際も、材質の適合性を確認する必要があります。

硫酸

硫酸は、濃度と温度によって材質への影響が大きく変わります。濃硫酸に耐食性を持つ材料でも、希釈された硫酸では腐食する場合があるため、通常運転時だけでなく、水の混入や洗浄時の条件も考慮します。

塩ビ管も、硫酸の濃度や温度によって耐薬品性の評価が異なります。耐薬品性の表に加え、製品ごとの使用温度・圧力の範囲を確認して選定しましょう。

水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)

苛性ソーダには、使用条件に応じて塩ビ系やPP系などの配管が候補になります。加熱して使用するラインでは、耐薬品性に加えて耐熱性や耐圧性能の確認が必要です。

保温や凍結防止のために加熱する場合も、配管が実際に受ける温度を把握し、その条件に適した製品を選びます。

次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムでは、配管本体に加えて、パッキンやガスケットの耐薬品性にも注意が必要です。配管の材質が適切でも、シール材が劣化すると接続部からの漏れにつながります。

硝酸

硝酸は、濃度や温度によって塩ビ管への影響が変わり、高濃度では使用に適さない場合があります。「耐熱性があるから硝酸にも使える」と判断せず、耐硝酸性を確認する必要があります。

樹脂配管・金属配管のいずれも、実際の濃度・温度に対応した材質を選び、ほかの酸が混ざる場合は混酸として適合性を確認します。

有機溶剤

トルエンやベンゼン、アセトンなどは塩ビ管を侵すため、これらを扱うラインでは別の材質を検討します。一方、有機溶剤は種類によって材質への影響が異なるため、「溶剤」という分類だけで一括して判断しないことが大切です。

混合溶剤を使用する場合は、含まれる成分と混合比率を整理し、その条件で使える配管・バルブ・シール材をメーカーに確認します。

薬液配管の漏れを再発させないための対策

材質は配管・弁・ガスケットまでそろえて選ぶ

漏れた箇所だけを同じ材料で直しても、原因が材質にあれば再発します。塩ビ、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、FRP、ステンレス、ライニング鋼管などから、薬液の種類・濃度・温度に合うものを、メーカーの耐薬品性データで確認して選びます。配管の更新時に誤った材質の弁を取り付けて腐食し、15%塩酸が約5.4トン漏れた事例もあり、弁やガスケットまで同じ基準で選ぶことが大切です。

接合・支持・伸縮対策まで含めて施工する

材質が適切でも、施工が不十分なら漏れは防げません。接着や融着は手順書どおりに行います。フランジは片締めにならないよう対角の順に数回に分けて締め、樹脂製のフランジは締め過ぎにも注意して、規定のトルクに合わせます。温度変化の大きい樹脂配管には伸縮継手を設け、ポンプ周りは可とう継手や配管支持で振動の負担を減らします。

漏れを早く見つけ、広げない設備にする

フランジやバルブなど漏れやすい箇所には、飛散防止のカバーや受け皿を設けます。配管は床から離して目視で点検できる位置に通し、日常点検でにじみや変色、支持金具のさびを確認しておくと、小さな漏れのうちに対処できます。

>>工場配管の注意すべき劣化サイン|蒸気・CIP配管の注意点

当社の施工事例|耐薬品性と熱伸縮に配慮した塩ビ配管工事

大口径塩ビ(PVC)配管の特殊製作

大口径塩ビ(PVC)配管の特殊製作

お客様の課題
酸やアルカリ、油脂など、さまざまな廃液が混ざる環境で、金属管に代わる耐食性の高い配管が求められていました。絶縁性が必要な化学実験装置への接続も課題でした。

施工の流れ
塩ビ配管施工手順書に基づく接合 → 強度が不足する箇所のFRP補強 → 気体・液体それぞれの用途に合わせた系統施工

施工効果
金属腐食の心配がなく、耐薬品性に優れたラインを構築しました。FRP補強で強度も確保し、長期的に安定した搬送システムを実現しました。

>>大口径塩ビ(PVC)配管の特殊製作の詳細はこちら

大口径塩ビ排水配管 敷設工事

大口径塩ビ排水配管の敷設工事

お客様の課題
製造設備からの排水(塩ビ300A)の放流先を、行政の指摘により変更する必要がありました。排水量や温度に不明な点が多く、熱伸縮による漏れのリスクも懸念されていました。

施工の流れ
現況調査(井戸水の汲み上げ量などから配管径を算出)→ サポート製作 → 現地配管工事(伸縮継手の適正配置)→ 完了(工期3ヶ月)

施工効果
不明確だった排水条件を精査し、最適な配管径と、伸縮継手による熱伸縮対策を施した設計・施工を行いました。法規制を守った健全な排水システムを構築しました。

>>大口径塩ビ排水配管 敷設工事の詳細はこちら

薬液配管の漏れ・更新のご相談は当社にお任せください

薬液配管の漏れは、材質、接続部の施工、熱伸縮や振動、配管の支持方法など、さまざまな原因で起こります。漏れた箇所を直すだけでなく、原因を突き止めて対策することが再発防止の近道です。

当社は、静岡・横浜を拠点に、関東・東海エリアの1都13県で配管・電気・計装工事に対応しています。塩ビなどの樹脂配管から、ステンレス配管まで、薬液の種類や使用条件に合わせた配管工事をご対応します。無料の現地調査で漏れの状況を確認したうえで、部分的な補修で対応できるか、材質を見直して更新すべきかをご提案します。

「同じ箇所から何度も漏れる」「いまの配管の材質が薬液に合っているか不安」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

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